普通 登場人物 僕(11):主人公 ケイ(11):僕と仲のいい女の子 ギン(11):僕の親友 僕は至って「普通」だと思う。 みんなの様に何かしらの特技が有るわけでもないし、成績も顔も運動神経も背の高さも「普通」だ。 友達の中にはこう言っちゃ悪いけれど、何かしらの能力が低いのもいる。 でも其れさえもうらやましく思える程に、僕は「普通」だった。 ある日、特に仲の良いケイとギンと一緒に帰っていた時だった。 僕の家の周りが騒がしかった。 何でも、都会から偉い人達がやってきて、パパとママを連れて行ったらしい。 何か悪い事をしたのかとも思ったが、誰も何も教えてくれなかったので分からなかった。 とりあえず、僕は一人では暮らせないので、ギンの家にお世話になることになった。 ギンの家族はみんな優しかったが、何故か僕は学校には行かせてもらえなくなった。 それどころか、外出自体を禁止されてしまった。 ケイが毎日遊びに来てくれるし、当然ギンも毎日一緒だから寂しくは無かったし、学校は嫌いだったから別に気にしなかったけど。 しばらくしたある日、ギンが慌てて僕の腕を掴んで家から連れ出した。 外に出ちゃいけないんじゃなかったのかな? 聞くとギンの両親も連れて行かれたらしい。 仕方なく、今度はケイの家にお世話になることになった。 でも、何でだろう? どうして、僕の両親もギンの両親も捕まってしまったのだろう? もしかして僕が何かしちゃったのかな? 僕が悪いからみんな捕まっちゃったのかな? 此の侭じゃケイやケイの両親も捕まっちゃうのかな? またしばらくしたある日、ギンとケイが慌てて部屋に飛び込んできた。 ああ、やっぱり・・・やっぱり僕が悪かったんだ。 ケイの両親も捕まっちゃったらしい。 きっと僕が普通に生きてたつもりが、何処かで悪い事をしてしまい、其れが都会の偉い人達にばれてしまったんだ・・・ 僕は思い切って二人の親友に聞いてみた。 僕は何をしたの?って・・・ でも、二人とも教えてくれなかった。 二人とも下を向いて黙っちゃった。 そんなに僕は悪い事をしたのかな・・・ 何だろう?何をしたんだろう? 考えても全然分からない。 二人はとにかく逃げろと僕を連れて走った。 途中、ギンが追手を食い止める為に囮になった。 続いてケイも。 女の子なのにすごいと思った。 僕は親友達の頑張りを無駄にしないように必死で逃げた。 逃げて、逃げて、逃げ続けた。 何処かの家の塀の影の隠れながら、僕は親友のことを思い返してみた。 手が六本あって何でも器用にこなせたギン・・・ ピンク色の大きな角と、嘴がかわいかったケイ・・・ 僕なんか腕も足も二本しかないし、目も耳も二つ。 口や鼻なんか一つしかない。 角も牙も無い。 火も吹けないし、電気も出ない。 こんなに普通な僕が何故狙われるんだろう? 地球から人間が追い出されて10年が経った今、僕は独りで考えていた。 いろいろ思い出してきた。 そういえば僕は拾い子だって聞いた。 そういえば町のみんなは味方だって何回も聞かされた。 そういえば人間は飼っちゃいけない、宇宙へ追い出さなければいけないとも聞かされた。 そういえば何処かの田舎で人間をこっそり飼っていた裏切り者を捕まえたってニュースを見た。 そういえば田舎の人達は地球侵略に反対だった者が多いって聞いた。 そういえば そういえば そういえば・・・ そういえば僕は随分と人間らしかった。